森永おくち研究所
● オーラルケア

【図解】だ液のお話





「だ液のお話」について、詳しく解説!

だ液とは?


だ液とは、お口の中をうるおし、食事や健康を支える大切な体液です。
成人では主に以下の4種類のだ液腺から、一日に約1~1.5L分泌されています。

  • 耳の前下方にある耳下腺(上の奥歯のほおの内側に開口します)
  • あごの下にある顎下腺(舌の裏の中央あたりに開口します)
  • 舌の下にある舌下腺(舌の下のひだに小さな開口部を多数もちます)
  • お口の中のあちこちにある小唾液腺(それぞれの場所から少しずつ分泌します)

また、だ液には性質の違う2つのタイプがあります。

  • サラサラだ液:食べ物を湿らせ、味を感じやすくするとともに、消化を助けます
  • 食べ物をまとめて飲み込みやすくし、口腔粘膜を保護します

これらのだ液の分泌は、自律神経(交感神経と副交感神経)によってバランスよく調節されており、その働きによって分泌量や性状が変化します。

だ液の働き

だ液には大きく分けて3つの働きがあります。

  1. 食事を助ける
  2. むし歯を予防する
  3. 口腔内を保護する

それぞれについて詳しく解説します。


① 食事を助ける

だ液は、豊かな食生活を送るために不可欠な存在です。まず、だ液に含まれる水分やムチンという糖たんぱく質の働きによって、食べ物がしっとりとまとまり、「食塊」と呼ばれる飲み込みやすい形になります。このはたらきにより、食べ物をスムーズに飲み込むことができます。
また、だ液にはアミラーゼという酵素が含まれており、ごはんやパンなどに多く含まれるでんぷんの分解を口の中から始めてくれます。こうして、消化の第一歩が自然と進んでいきます。
さらに、だ液には食べ物の成分を溶かす「溶媒作用」もあります。これによって味のもととなる成分が舌に届きやすくなり、甘い・しょっぱいといった味をしっかり感じることができます。
このように、だ液は食べ物をまとめて飲み込みやすくし、消化を助け、さらにおいしさを感じさせてくれる、私たちの食事に欠かせない存在なのです。


② むし歯を予防する

だ液は、お口の中をきれいに保ち、むし歯を予防するうえでも大切な働きをしています。
まず、だ液は食べかすや細菌をやさしく洗い流してくれます。食事のあとにお口の中がベタつきにくくなるのは、この働きのおかげです。
食事をすると、口腔内の細菌が出す酸により歯の表面が「脱灰(だっかい)」という、一時的に溶けやすい状態になります。そこで、だ液に含まれるリンやカルシウムなどの歯のもととなる成分が歯に戻り、弱くなった部分を少しずつ元に戻してくれます。これを「再石灰化作用」といい、むし歯になりにくい丈夫な歯が保たれます。
さらに「pH緩衝作用」といって、細菌が出す酸によってお口の中が酸性に傾いたときに、それを中和してくれる働きもあります。むし歯は酸によって進みやすくなるため、この働きによって歯が守られます。
このように、だ液は「洗い流す」「歯を修復する」「酸をやわらげる」という3つの働きで、毎日のむし歯予防をやさしく支えてくれているのです。


③ 口腔内を保護する

だ液は、お口の中をうるおし守ることで、口腔内の健康を保つ大切な働きもしています。
まず、だ液に含まれるムチンという粘り気のある糖たんぱく質が、口の中の粘膜の表面をやさしく覆ってくれます。これにより、食べ物の刺激や乾燥から粘膜を守る「粘膜保護」の働きが期待できます。
さらに、だ液には傷ついた粘膜の回復を助ける成長因子(細胞に“増えて・修復して”と伝える合図)が含まれており、「粘膜修復」に関わっています。たとえば、口の中を軽く噛んでしまったときでも、比較的早く治るのは、だ液のこの働きのおかげです。
また、だ液の中には細菌の増殖を抑えるたんぱくや酵素などの成分が含まれており、お口の中に入ってきた病原菌の働きを弱めたり、増えすぎるのを防いだりします。これにより、感染から守る「病原菌の侵入を防ぐ」役割も果たしています。
このように、だ液は粘膜を守り、修復を助け、さらに細菌から体を守ることで、お口の中の健康を毎日しっかり支えてくれているのです。

だ液がなくなると…?

だ液が減ってしまうと、お口や食事にさまざまな影響が出てきます。

① むし歯になりやすくなる


まず、だ液にはお口の中を洗い流したり、歯を修復したり、酸をやわらげたりする働きがあるため、これが不足するとむし歯になりやすくなります。食べかすや細菌が残りやすくなり、歯が守られにくくなるためです。

② 歯周病や口臭の原因になる


さらに、だ液には細菌の増殖を抑える働きもあるので、減ってしまうと細菌が増えやすく、バランスを崩すこととなり、歯周病や口臭の原因にもなります。お口の中が乾くことで、においも発生しやすくなってしまいます。

③ 食事がしづらくなる


だ液は食べ物をまとめたり飲み込みやすくしたりする役割もあるため、減ると食事がしにくくなります。うまくかめなかったり、のみ込みにくくなったり(嚥下・咀嚼の低下)、味の成分が溶けにくくなることで味が分かりにくくなる(味覚異常)こともあります。

④ 発音・発語障害


お口の中が乾いて動きが悪くなることで、舌やくちびるがスムーズに動かしにくくなり、発音や発語にも影響(話しにくさ)が出てくることがあります。

だ液の分泌量は、加齢や病気によって減少してしまうことがあります。また最近では、やわらかい食事であまり噛まない(咀嚼不足)ことや、口呼吸の習慣などの影響で、子どもでも口が乾きやすくなることが指摘されています。
このように、だ液はむし歯予防だけでなく、食事や会話まで支えている大切な存在なんですね。

だ液を出すには?

だ液は、日々のちょっとした習慣で増やすことができます。お口のうるおいを保つためには、いくつか大切なポイントがあります。

① よく噛む


まず大事なのは、よく噛んで食べることです。噛む刺激はだ液腺を刺激し、だ液の分泌を促します。やわらかいものばかりではなく、しっかり噛む食品を取り入れることで、自然とだ液が出やすくなります。

② 鼻呼吸をする


鼻呼吸を意識することも大切です。口で呼吸をしているとお口の中が乾きやすくなり、だ液の働きが十分に発揮されません。鼻づまりがある場合は早めに対処し、なるべく鼻で呼吸する習慣をつけることは、口の中の乾燥を防ぎ、だ液の働きを保つことにつながります。

③ 水分をとる


さらに、こまめに水分をとることも忘れてはいけません。だ液はもともと血液から作られているため、体の水分が不足すると分泌量も減ってしまいます。特に乾燥しやすい季節や運動のあとなどは、意識して水分補給をすることが大切です。

④ 規則正しい生活をする


そして、規則正しい生活を送ることも関係しています。だ液の分泌は自律神経と深く関わっており、ストレスや生活リズムの乱れがあると分泌が少なくなることがあります。しっかり睡眠をとり、生活リズムを整えることで、自律神経のバランスが整い、だ液も出やすくなります。

このように、「よく噛む・鼻呼吸・水分補給・規則正しい生活」を意識することで、だ液はしっかり分泌され、お口の健康をやさしく守ることにつながります。

監修
小林冴子

歯科医師・歯学博士, 鶴見大学歯学部小児歯科学講座勤務。
日本小児歯科学会専門医, 服部幸雄主宰NPO法人協会認定食育インストラクター。
二児の母。趣味は観劇とアウトドア。

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